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第3次中期経営計画進捗状況

計画骨子

第3次中期経営計画期間を「独自のトータルヘルスケア企業として世界に躍進する5年間」と位置づけています。医療関連事業とNC 関連事業において、「既存事業価値の最大化と新たな価値創造」、「資本コストを意識した経営の実践」に取り組むことで持続的な成長を維持し、成長投資と株主還元の両立に注力しています。

第3次中期経営計画の進捗状況(2022年度実績)

新型コロナウイルス感染拡大や、原材料費・エネルギーコストの高騰、急激な為替変動など、第3次中期経営計画策定時では想定していなかったさまざまな外的影響を受けましたが、「独自のトータルヘルスケア企業」として、生活に必要不可欠な医療関連事業および健康に寄与するNC 関連事業を両輪として多様なビジネスを展開する強みを活かし、これらの影響を乗り切ることができました。
売上収益は、医療関連事業のグローバル4製品とNC 関連事業の主要・育成3ブランドの増収だけでなく、すべてのセグメントにおいて増収となった結果、前期比+16.0%の1兆7,380億円となりました。事業利益は、積極的な研究開発費を確保しながらも、販売管理費を計画どおりコントロールすることで前期比+11.3% の1,749億円と大きく増加し、第3次中期経営計画の最終年度となる2023年度の目標達成に確かな手応えを得られました。今後も、金融不安や為替変動のリスクなど外部環境がもたらす事業への影響を精査しつつ、機動的に対応することにより、中期経営計画の達成を目指します。

第3次中期経営計画の業績目標

2023年度計画

中期経営計画最終年度となる2023年は、グローバル4製品およびNC関連事業の成長により、売上収益は過去最高となる前期比620億円増加の1兆8,000億円を計画しています。グローバル4製品に関しては、すでに中期経営計画最終年度の売上計画4,800億円を2年前倒しで達成しており、新たに6,365億円の売上収益を目指します。また、NC関連事業でも「ポカリスエット」は市場の成長率を超えてアジアを中心に伸長しており、さらなる販売エリア拡大も進めています。「ネイチャーメイド」は当初計画より前倒しで2021年に1,000億円の売上収益を達成しており、引き続き成長しています。
事業利益は、新製品・新領域への積極的な成長投資および共同販売費の増加で販売管理費が増加しますが、増収および既上市製品の販売管理費率の減少により、前期比351億円増加の2,100億円を計画しています。外部環境が大きく変化している中でも、独自のトータルヘルスケア企業として真価を発揮し、第3次中期経営計画を超えた成長を目指します。

キャッシュ・フロー

第3次中期経営計画期間中のキャッシュ・フローは、さまざまな外的要因があったにもかかわらず、好調な事業利益に加え、資産効率改善に努めた結果、営業キャッシュ・フローを安定して創出しています。また、社債を初めて発行し、調達手段の多様化にも取り組みました。この獲得したキャッシュを「既存事業価値の最大化と新たな価値創造」のために、製品・パイプラインの強化への積極的な研究開発投資や、新たなエリア展開に伴う設備投資等の成長投資および株主還元にアロケーションする一方で、内部留保として確保しました。これは将来の成長投資や今後の金利上昇を見据えた借入金の削減、および金融不安による資金調達リスク対応として確保したものです。2023年度は、北米において5月に承認された「レキサルティ」のアルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)の適応症や、uRDNシステムの承認という医療関連事業の重要なマイルストーンイベントがあり、現在は資金を確保しています。今後も成長機会に応じ、機動的に投資をしつつ、利益の成長に応じた株主還元のバランスを考えたキャッシュ・アロケーションを実施していきます。

キャッシュ・フロー

企業価値向上に向けた取り組み
(1)ROICマネジメント

第3次中期経営計画において、「既存事業価値の最大化と新たな価値創造」と「資本コストを意識した経営の実践」を大塚グループ全体で浸透させ、既存事業からのキャッシュ・リターンを最大化し、既存事業から得られたキャッシュを成長分野への再投資と安定継続的な株主還元に適切に配分する、という方針を掲げました。
第3次中期経営計画期間は、「資本コストを意識した経営の実践」の導入期間として位置づけており、資本コスト(WACC)を大塚グループ全体で5.5%と設定し、資本コストを上回る安定的な事業リターンを確保することを目指しています。現在ROICマネジメントの浸透に注力しており、グループ全体でROICを意識した投資立案や計画立案を開始しています。ROICマネジメントを浸透させることは、短期的な資本効率の改善だけではなく、中長期的な企業価値の向上に重要な施策と考えています。財務面から大塚の企業文化である「大塚だからできること」「大塚にしかできないこと」を実践し続けるための安定した財務基盤を構築することが、イノベーション創出による社会貢献につながると考えています。具体的な個別の実践と2023年度の取り組みは次項以降となります。

財務戦略の枠組み

既存事業の売上収益最大化

第3次中期経営計画における骨子の「既存事業価値の最大化と新たな価値創造」の取り組みとして、当社事業の両輪である医療関連事業とNC関連事業の既存事業の売上収益最大化を目指します。医療関連事業は、グローバル4製品のさらなる売上収益拡大に加え、輸液事業や他の治療薬の売上収益を最大化する適切な人的資本、経費の配分を実施しています。また、製品・パイプラインの多様化に伴い、開発・販売権を導出し、他社とのライセンス契約を通じてロイヤリティ収入も拡大させています。NC関連事業は、主要3ブランドのさらなる事業規模の拡大および育成3ブランドの製品価値の訴求により成長を加速させます。ブランド価値の訴求に加え、第3次中期経営期間中に新たに進出したエリアの事業を拡大していきます。

既存事業の経費効率化

医療関連事業の既上市製品については、販売管理費率の目標を定め、経費をコントロールすることでコスト最適化を実践しています。販売管理費率は、第3次中期経営計画最終年度に目標としていた29%を2022年度中に達成しており、2023年度はさらに改善を目指します。
NC関連事業は、競合会社が積極的に投資を進める中、大塚独自の製品価値訴求方法で、効率的かつ規律ある経費の使用を実践しています。

医療関連事業の既上市製品販売管理費率推移

バランスシートを意識した事業運営

投下資本から見た資産サイドに関しては、事業資産の効率的な運用を意識し、棚卸資産の適正水準維持等による運転資本のコントロール、固定資産管理の強化、政策保有株式の定期的検証と組み換えなどを推進しています。非事業資産は、継続的に事業への有効活用および売却による見直しを実施しています。
調達サイドは、有利子負債の圧縮による、金融不安に左右されない安定した財務基盤の構築と資本効率の向上を目指しつつ、外部からの資金調達が必要な場合は、調達コスト、調達に要する時間、D/Eレシオなどのバランス、格付などから総合的に判断し、有利子負債と株主資本の最適資本構成を目指します。

投下資本から見たROICマネジメント

2023年度の取り組み

2023年度は、第3次中期経営計画の最終年度として、目標達成に取り組むとともに、第4次中期経営計画立案の重要年度です。ROICマネジメントをさらに浸透させ、第4次中期経営計画に織り込むとともに、ROICマネジメントの本格運用に向けて準備を進めてまいります。2023年度は引き続き、売上収益の最大化に加え、さらなる経費効率化の実践、各事業・製品ごとの収益構造の見える化と今後の大塚グループに適した経営指標の検討、バランスシートを意識した効率的な資産・負債管理に取り組みます。あわせて、次期第4次中期経営計画でのROICマネジメントの運用に向け、ROICツリーに連動したKPIの具体化に取り組みます。

(2)新たな価値創造をサポートする財務戦略の枠組み

コーポレート部門の取り組み

コーポレート部門を中心に全社的な基盤を整備することで、円滑な事業推進をサポートし、間接部門コストの最適化を実践しています。エリアを日本、北米、欧州、アジア、中国の管理体制で横断的にガバナンス体制強化を図りながら、シェアードサービスの拡大、IT基盤の強化、グループ内金融の推進、プロキュアメント機能の効率化を図っています。例えば、グループ内金融推進の取り組みとして、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入し、エリアをまたいだ会社間の資金融通により資金効率を高めることで、外部からの借入金および支払利息を縮小し、キャッシュ創出力の向上に貢献しています。

コーポレート部門のエリアごとの取り組み

成長投資資金の源泉

成長投資資金は、原則、事業からのキャッシュ・リターンを源泉としており、大塚グループ内の資金を日本、米国、中国を中心にCMSを活用し、事業セグメントをまたいで有効活用しています。外部からの資金調達が必要な場合には、コマーシャル・ペーパー(CP)、社債、銀行借入、株式発行などで臨機応変に対応できる準備を整えています。金融不安により一部の調達手段が利用できなくなることも想定し、事業機会を逃さないように備えています。

成長投資資金の配分

大塚グループは、イノベーションにより社会に貢献することを大切にしているため、企業価値向上と社会貢献を実現する投資案件を継続的に検討し、時期を逃さず投資を行うことを基本方針としております。このための投資資金は、既存事業のオーガニックな成長から創出されたキャッシュを利用し、医療関連事業とNC関連事業を中心に、大塚グループ全体の将来の成長に寄与する案件毎に優先順位をつけて配分しています。その具体例として、医療関連事業では、重点領域である精神・神経領域、がん領域、循環器・腎領域において製品・パイプラインを強化するための持続的な研究開発投資だけでなく、超音波腎デナベーション治療などの新たなアプローチを提供する医療機器事業に投資しています。NC関連事業では、新エリアへの販路拡大投資に加え、育成3ブランドの製品価値の訴求によるブランド構築と生産・販売体制の強化に投資しています。

コングロマリット型経営による財務の安定

医療関連事業は、パテントクリフの存在により、独占販売期間満了後に収益が激減するボラティリティの高い事業です。その影響を低減させるためには、持続的な研究開発投資により新薬を上市し続ける必要がありますが、研究開発投資には多額のキャッシュが必要となるうえ、成功も保証されていません。大塚グループでは、既存の医療関連事業から生み出されるキャッシュだけでなく、NC関連事業を中心とした医療以外の事業から創出される安定したキャッシュにより、投資活動を継続し、パテントクリフの影響を低減できています。多様なビジネス展開は、事業領域を超えてイノベーションを生み出すシナジー効果だけでなく、財務面におけるコングロマリット型経営のメリットと考えています。

医療関連事業の営業利益推移 NC関連事業の営業利益推移

(3)株主還元方針

株主還元については、安定継続的な配当を行うことを基本としています。配当の継続性と安定性を重視しつつ、成長投資に必要な内部留保や財務状況、最適資本構成を総合的に勘案して配当額を慎重に検討しています。
第3次中期経営計画期間中は、さまざまな外的要因により収益が変動しましたが、安定した営業キャッシュ・フローの確保と安定継続的な配当を実施しています。第3次中期経営計画の結果と財務状況、および第4次中期経営計画期間の成長投資計画とのバランスを考慮し、さらなる株主還元も検討していきます。

2023年7月12日
取締役 CFO

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