社外取締役 松谷 有希雄 まつたに ゆきお
創業家の精神や大塚らしさを保持しながらコーポレートガバナンスを進化させていく
就任から現在にかけて
2016年の就任当初は、現在の第3次中期経営計画の策定に向けた準備が始まっていました。大塚グループは、もともとは非上場企業で、創業家のカリスマ性による経営によって発展してきました。そこから上場を経て、いわゆるオーナー企業としての経営形態から、株主が経営者を選ぶ上場企業としての形態に移行していきました。就任当初はその前半ステージにあったものが、現在は後半ステージにきているという実感があります。コーポレートガバナンスをはじめ、企業形態の移行はときに混乱を生じる場合もありますが、当社の場合は比較的順調に進んでいると感じます。一つは樋口社長が大塚生え抜きの経営者であり、創業家の精神とグローバル型経営双方に通じていることが大きいでしょう。
今後真のグローバル企業として経営の規模を拡大し、さらなる発展を目指すにあたっては、創業家の精神や大塚らしさを保持しながら、経営の形態やコーポレートガバナンスをどう進化させていくかが課題になります。
グローバルガバナンスに関する進捗と課題
グローバルガバナンスにおいて最も重要な課題の一つがリスクマネジメントです。グローバルと一言に言っても、国ごとに個別の課題があるため、非常に複雑です。この点について、もちろんまだ対処すべき課題は多くありますが、組織として対応していく体制の整備は着実に進捗していると感じています。
グローバルガバナンスの構造としては、株主、顧客、取引先など多様なステークホルダーがいる中、全体を見渡しどのような形態が最もふさわしいかという議論は慎重にしなければなりません。大塚グループには、創業から受け継がれる独自の良い文化がありますから、その良さを残しながら、どのように真のグローバル企業になっていくかという点が問われます。理論的にこうあるべきという概念があっても、実際の社会はもっと矛盾だらけで複雑です。現実は頭で考えた通りにはなりません。しかし経営は学問と異なり、常に決断をしていかなければならない。それをそれぞれの専門的視点からサポートするのが我々社外取締役の役割だと認識しています。
経営人材の教育・育成も大変重要な項目の一つです。海外事業に対応する人材の登用は、言語能力が一つの選択基準になりがちですが、マネジメント能力が本来最も重要です。また、言語能力とグローバル感覚は必ずしもパラレルではありません。これらを念頭に置いた経営人材の組織的な開発が重要でしょう。
多様性による進化
生物学的な進化は、集団の中に多様な個があり、その中で環境に適応できたものが生き延びる、これを繰り返していきます。環境が次々に変化していく中で、何が先々の環境変化に順応できるかは、必ずしも予測可能なものではありません。そういう点で、多様性に富む大塚のビジネスは、時代時代の環境変化に対応した進化を実現できる構造であると思っています。
一方で、多様性に富むということは必然と無駄も生じかねません。そのためのグローバルガバナンスになりますが、何をコーポレートとして管理するか、何を現地の独自の活動に任せるか、という線引きは難しいところです。各国でそれぞれ市場も異なり、各事業のステージも異なります。海外で事業を行う目的もそれぞれ違う。あまり緻密に管理しすぎても、別の意味での無駄が生じてしまうでしょう。また、事業が成功するか否か、投資をするか、打ち切るか、などの判断を、どのタイミングで、どういう基準で、誰が判断するのか、ということも明確にしなければなりませんが、こちらもあまり緻密にやりすぎると管理にばかりコストがかかってしまいます。
また、大事にしていかなければならない大塚の精神を基盤として保持しながら、時代に合わなくなったものは取捨選択する必要があります。生物学的にも代謝は生命の維持のために必要です。10年前の自分と現在の自分、私たちは脳に記憶が残っているから同じつもりでいますが、実際はそうではありません。何を残す、何を捨てるという選別は大変難しいですが、取捨選択は組織的に、エビデンスやデータをもって判断する基盤を整備していく必要があります。
コーポレートガバナンス委員会の役割
発足当初は、いわゆる指名・報酬委員会としての役割からスタートしました。現在にかけて、もちろん基本的な指名・報酬委員会としての議論は引き続きしっかりと行われていますが、それをベースとしたコーポレートガバナンス全体の考え方を、取締役会よりもさらに自由度の高い形で議論をし合う時間が増えています。
単に与えられたミッションをこなす委員会ではなく、コーポレートガバナンスについて根本から議論する形態に進化してきたことを感じます。
社外取締役 関口 康 せきぐち こう
グループ全体としてどのように最大価値を生み出すか、持続的成長を生み出すか
グループガバナンスの強化に向けた進捗
大塚ホールディングスの今後のグループ経営においては、各事業会社の個々の事業を順調に進めていくことに加え、グループ全体として、どのように最大価値を生み出すか、持続的成長を生み出すか、ということに焦点を当てていくことが大切になると思います。
前回のガバナンス対談においても、大塚ホールディングスのコーポレートガバナンスが目指すべきは、大塚グループの総合力を最高な状態に高めるための、最適な体制と運営の検討と実現であるとの議論を行いました。この点においては、2022年3月より高木常務取締役がCSOに就任され、大塚ホールディングスのコーポレートストラテジーに対する機能を組織的に強化していくことになりました。これは大塚のグループガバナンス強化に向けた非常に大きな一歩だと思っています。
さらにこれから、グループ全体のシナジーや10年後のビジョンはどうあるべきかを念頭に置いて、大塚ホールディングスの目指す姿と、各事業会社の目指す姿が同じ方向を向いているか、大塚グループの中で各事業会社の果たすべき役割が明確になっているか、これらについて議論を深めていく必要があると考えます。
財務面では、第3次中期経営計画において資本コストを意識した経営の実践を掲げ、牧野取締役CFOを中心に取り組みが進められています。また、さまざまなシェアードサービスの導入や拡充も進んでおり、これらはグループガバナンス強化において非常に重要な要素であると認識しています。いずれも事業規模や形態、業種、事業のステージもまったく異なる多くの子会社に浸透させていくことは大変な企業努力が必要ですが、着実に進捗していると思います。
グローバル人事戦略の重要性
これらのシェアードサービスの導入や運用を含め、グループガバナンスに重要な役割を担うのがグローバル人事の機能です。現在、グループの人事制度・戦略は各事業会社が主体となって個々に策定・運用されていますが、人事制度や給与体系が複数存在する中で、グローバルな視点から、各事業会社の枠を超えたシェアードサービスやグループ全体の価値向上に向けた人材活用や人材育成を実現するには難しい面があります。それぞれのグループ会社が、どういう役割、責任を果たすべきなのかというのを明確にした上で、グループとしての貢献度に連動したグローバルの人事制度や人事戦略を組織的に整備して行くこと、また、業態が異なる会社が集まる中での報酬制度の在り方についても検討していくことが、人材育成も含めグループガバナンスの強化を支えることになると思います。
イノベーションの創出のためにも、さまざまな場所にある情報が一元的に集まる仕組みは絶対に必要です。一見関係のない情報が一カ所に集まることで、予期せぬ相乗効果や全く新しい価値が生まれます。人材の情報も同様です。多様な事業をグローバルで展開している大塚グループだからこそ、グループ間のシナジー創出の面においても、個々人のキャリア育成においても、グローバル人事機能の整備、強化は、より多くの機会が生まれるベースとしての役割を果たすことになります。特に、グループ全体の価値向上に向けたグローバルに通用する人材を育成するという立場と発想が必要です。海外の会社経営を任せてみることが一つの有力な方策ですが、当然、誰もが成功するわけではありません。経営者の立場になった際には、攻めも大切ですが守りや持続性、つまり短期的な成功だけでなく、長い期間勝ち続けることがより重要です。経営者としての経験がない場合は理解しにくい事でもあるため、幹部教育・研修体制が重要になります。大塚ホールディングスでは、樋口社長を中心にグループの次世代経営人材の育成に注力されていますが、そのような育成プログラムを、各事業会社に落とし込み根付かせていくことが有効だと思います。
グループに対する貢献や役割について責任を持つ
新規性の高いイノベーティブな医薬品を継続的に創出し開発していくことは非常に難しい時代です。だからこそ、各事業や事業会社が自らグループの中でどのように貢献していくか、どのような役割を担っていくべきか、しっかりと認識し責任ある取り組みを行うことが大切です。NC関連事業においては、さらなるイノベーションを起こせる高いポテンシャルがあると思います。どこにも真似のできないユニークなポジションにあるからです。予防から予後までを一気通貫で見ている会社は世界でもそうありません。
多様な事業を行う中では、投資判断や戦略の策定などについても、もっとグループ横断的なコミュニケーションと戦略的検討があるとよいと思います。多くの経験・ノウハウを有する事業会社、特定領域で強みのある事業会社がグループ内に存在する場合は、そちらで投資をしたほうが価値を最大化できるかもしれません。また、各事業会社の個別の視点と予算の中で、独自の判断に基づき戦略・投資が決定されてしまうと、その判断がグループ全体の方向性、利害と合致しない場合が出てくる可能性もあります。資本コストを意識した経営の実践においても重要な視点だと考えます。
社外取締役の役割
社外取締役の役割について、経営の監督機能はその基本的役割として重要であり、それを疎かにすることはありません。さらに、グループ全体のシナジーや将来のビジョンを含めた業務執行面における外部の視点からの助言も大切だと考えています。独立した立場から、良いものは良い、変えたほうが良いものは変えたほうが良いと積極的に提言することが我々の役割だと思っています。現在、事業環境は目まぐるしいスピードで変化しています。新型コロナウイルスの感染拡大に続き、地政学的なリスクも拡大しています。従来、過去の成功事例をもとにした情報は財産とされていましたが、今はそれでは通用しません。企業側も認識を変えていかなければなりません。
社外取締役 青木 芳久 あおき よしひさ
さらなるグローバル化や発展を見据えた「十分に耐えられる仕組み作り」を
グローバルガバナンスの課題
これまでの大塚グループの経営は、グループ内で事業会社同士が競争しながら経営を行うことで成長を実現するという考えのもと、それを実行し、その結果大塚グループは「独自のトータルヘルスケア企業」として成長してきたわけでありますが、世の中が複雑になり、グループ会社の数も200社を超えようとしている状況下、どのような方向を目指すのか、またそれをどのように管理していくかの「仕組み」を見直す時期にきていると思います。
大塚ホールディングスとして上場している以上、経営の効率性と収益性をより高め、ステークホルダーへの貢献をしていく必要がありますので、創業の精神を活かしつつ、グループ全体の方向性や仕組みの再構築を行うことは良いわけで、2022年3月より高木常務取締役がCSOに就任されたのも、その意思の表れと思っております。
Trust but double checkの体制
仕組みの再構築にあたっては、各々のグループ会社に対し、任せる範囲と責任を明確にしていくことが重要になってきていると思います。グループの目指す方向と収益力に歪みが生じないよう、グループ会社の自主性を尊重しつつ、各社の経営や実行力をより強化していく一方、ホールディングスとしてコントロールする部分と任せる部分のメリハリをよりつけていくことが大切になってきていると感じております。
大塚グループの場合、今でも管理の仕組みはできていますが、これからさらにグローバル化を進め、グループ会社数が増加しさらなる発展をしていっても「十分に耐えられる仕組み作り」がこれから必要と私は思っています。
創業の精神
社外取締役に就任する以前から、「ユニークで面白い経営」をしている会社だなと思っていました。「ポカリスエット」「ボンカレー」「カロリーメイト」とどれをとってみても、世の為、人の為になることは信念をもってやり続けてきております。社外取締役に就任した後も、あらためてポテンシャルのある会社だと思っています。創業家から受け継がれる信念や物まねしない発想が生きている「独自のトータルヘルスケア企業」になっているからです。会社の創業の精神を引き継ぎ、信念を持って経営していくことは簡単なことではありません。しかし大塚グループにはその創業の精神が、企業の理念として現在も受け継がれています。これからもこの理念を活かしながら、人や社会のためになることをもっともっとやっていける会社だと思っています。
NC関連事業・消費者関連事業のさらなる飛躍に向けて
NC関連事業ならびに消費者関連事業は、医療関連事業に比べればまだまだの経営基盤ではありますが、独自の展開により着実に経営基盤を拡充してきております。現在消費者関連の市場は、環境問題や感染症の課題などもあいまって、さまざまな仕組みや価値観が大きく変わりつつあります。これは機会として捉え、大塚グループの独自の「目」をもって思い切った投資が実現すると、事業規模の拡大が大きく前進できるのではと思っています。
経営人材の強化・育成
現在も積極的に人材育成には力を注いでいますが、さらなるグループの拡大に備え、大塚ホールディングスの中に、グループ会社を含めた人材育成、ローテーションやアロケーションを行う機能をより強化し、グループ会社の経営人材の育成と拡充を行うことが必要になってきていると思います。
コーポレートガバナンス委員会の実効性
将来的には報酬委員会や指名委員会と分ける必要が出てくるかもしれませんが、現在の体制でも非常に活発な意見交換が出来ており、効果的に運用されていると思います。今後もさらなる意見交換を充実していってもらいたいと思っています。
社外取締役 三田 万世 みた まよ
大塚グループという組織体としての価値をさらに高める経営方針や事業戦略の在り方
大塚グループという組織体としての価値
大塚グループは大きな組織に成長し、グループ内に歴史的な背景も多様で、多くの事業会社がある中で、どのようにグループの本領を発揮するか、また、グループの根本的な価値を最大化するかを意識し、取締役会、コーポレートガバナンス委員会で議論が行われています。グループとして非常に強い事業経営基盤があり、それをフルに活用し、また、さらなるグループシナジーが発揮できれば、その価値はより高まるはずです。創業以来、各々の事業会社がそれぞれの独創性をもとに切磋琢磨する体制によって、これまで数々のイノベーションが生み出されてきましたが、デジタル化や情報のボーダレス化を含む外部環境の変化はこれまでにないスケールとスピードで進んでいます。このような環境下、組織のグローバル化、イノベーションやシナジーの実現などによる企業価値の向上がこれまで以上に求められており、取締役会などの場では、大塚グループという組織体としての価値をさらに高める経営方針や事業戦略の在り方を常に検討しています。
重要な項目の一つは、人材のモビリティです。日本人、あるいは日本の組織やその価値観も大きく変わり、自身のライフスタイルやスキルアップのために働き方や環境を自分自身で自由に選択する時代になりました。その点、大塚グループはさまざまな事業や会社を有しており、グループの中で自分のやりたいことが見いだせるチャンスがあり、会社としても人材のモビリティや育成という観点をより推進していってほしいと思います。
また、組織体としても個人でも、グローバルな視点に立ち、もっと大きく物事を捉えてほしい。リスクをとってどんどんチャレンジしてほしい。そのような個々のチャレンジを促進する組織の仕組みであってほしいと思います。
独創的なイノベーションと効率性
大塚は、グループという存在があり、グループ外部とのコラボレーションとはまた違った関係性をグループの中で創造することができます。しかもそれは一回きりではなく、持続的な関係性であり、トップ同士も繋がりがあるという強みがあります。米国の抗がん剤販売に係る大鵬薬品と大塚製薬、また大塚メディカルデバイスと大塚製薬とのコラボレーションなど先導的な事例も出てきています。このようなグループ内コラボレーションの事例がより見える形で成功することにより、他のグループ事業会社やプロジェクトも成功するコラボレーションについてより強い意識を持つようになってくるのではないでしょうか。
投資の面では、グループという組織体があることで単体よりも規模を高めることが可能になります。研究開発、IT、販路拡大などがその例です。業界的に利幅が薄い事業は、自社の利益の範囲での投資には限界があります。グループだからこそ、チャンスのある領域にはリスクをとれる投資が実現できる可能性があると思います。また、外部とのコラボレーションについても、大塚グループの総合力を評価してもらうことで、事業会社単体での評価とは大きく違う結果を生み出すことも可能になるでしょう。
一方で取捨選択も必要です。大塚グループには長く製品を育てる良い文化がありますが、「伸びる余地があるものには投資をするが、伸びる余地がないのであれば手を引くこと」も敢えてしなければ、次のものが成長できません。時代とともに社会の需要も変化していきます。そこにコストと人材が貼りついてしまうのは、グループの総合力を落としてしまうリスクがあります。新たなチャレンジをすることで色々な循環が生まれてくる、そのような仕組み作りと実行が重要だと考えます。
資本コストを意識した経営について
多様な事業がある中で、KPIは事業によって違って当然です。重要なのは、KPIを設けることで、その事業の経営にオーナーシップと経営責任の意識が組み込まれることです。資本コストやROICのコンセプトについても、グループの事業会社すみずみに浸透させることは簡単ではないと思います。グループの傘下にあり上場していない会社は、「事業を真面目にやっていれば一見問題がない」と考えがちになりますが、これらの指標を数値化することで、事業を執行する側にもガバナンスする側にも、事業内容や投資の優先順位の意思決定の透明性が向上するという大きなメリットがあります。
上場することで、株主という新しいステークホルダーが生まれました。株主の方々が大塚グループの株式を購入するということは、ただお金を預けているのではなく、その企業の持続的成長に期待をしているということです。「この会社は成長したいのだ」という意識が各ステークホルダーに伝わると信頼関係の向上につながるはずです。
取締役の多様性について
我々社外取締役は、各事業会社の事業を執行されている方々との意見交換や交流の機会を設けて頂いています。先々のサクセッションプランも市場から注視されている中で、グループのさまざまな事業の中にどのようなリーダーシップを執る方々がいて、どういう考え方を以て各事業会社の経営を行い、事業を執行しているかを直接確認できることは有難いです。
冒頭に申し上げた多様性の実現、グループシナジーの実現という意味では、海外の売上規模が拡大する中、実際に海外ビジネスの現場で指揮を執る方々を取締役会に取り込むことで、視野が広くなり、課題も捉えやすくなると思っています。現在はまだ大塚ホールディングスの取締役会メンバーは国内のトップマネジメントの方々が中心になりますが、海外でどのような課題があるか、どういう考えがあるかなど、数字から推察することが難しい部分についても、実際の事業を執行されている方々の考えを直接伺うことでグループの全体感がより見えやすくなることでしょう。
社外取締役 北地 達明 きたち たつあき
大塚が正しい方向性を常に目指し、さらに高みを目指していくガバナンス
企業理念の指すガバナンスの在り方
大塚グループの企業理念、“Otsuka-people creating new products for better health worldwide”にガバナンスの姿勢が第一に表れていると思います。for better health worldwideという言葉には、ガバナンスをプラスから始める、つまり何がいけない、ここを直さねばならないという事は当然クリアしたうえで、より良いガバナンスを目指すという姿勢。さらに、creating new productsという言葉に、より高みをめざしてチャレンジしていくという意思が込められていると認識しており、自身の社外取締役の役割は、大塚が正しい方向性を常に目指し、さらに高みを目指していくガバナンスにあると考えています。
「大塚だからできること」「大塚にしかできないこと」
「大塚だからできること」「大塚にしかできないこと」「ユニーク」、大塚が発信するこれらの表現は、特殊性や排他性を意味するのではなく、他の会社ではチャレンジしにくいものを強いリーダーシップを以てチャレンジしていく会社である、という意味が込められていると受け取っています。
以前、宇宙開発に関する研究を支える仕組みについて調べていた際に、研究開発には長期視点とプロセス管理と仲間の支持が必要だということを理解しました。必ずしも投資額が大きいものが成功するのではなく、小さなスタートから大きな結果や面白い結果が生まれることもあります。先の見えにくい種でも研究開発チームをリーダーの強いコミットメントで支えることや、ネットワークを作り情報交換をしつつ、目指す方向を徐々に修正しながらも先に進むことが重要であり、大塚はこれらが実践できる会社だと思います。
また、社会をよりよい水準に維持していくにはどうしたらいいかということは、患者さんや生活者、コミュニティに対し、正面から向き合う姿勢がなければできません。製薬において「エビリファイ メンテナ」はその代表例で、統合失調症の患者さんの社会生活や日常生活における課題や利便性を考えて開発された薬剤です。飲料の「ポカリスエット」についても、発売当初は一本一本手で売ってその有用性に対する認知を高め、普及させていった経緯がありますが、それから40年経った現在も、今度は建設現場等、暑熱環境下の過酷な現場で働く人々を支える「ポカリスエット アイススラリー」を開発し、さまざまな現場で普及活動を行っています。これは効率性だけを考えた製品開発やマーケティングの価値観では、生まれないものだと思っています。
やったほうがいいからやる
大塚には、規則だから、やらなければならないからやる、のではなく、やったほうがいいからやるという企業文化が根付いていると思います。その典型例がサステナビリティに対する取り組みです。持続可能な開発目標としてSDGsが2015年に採択されましたが、大塚は以前から取り組みを続けています。
生物多様性と経済の関係性を分析した「ダスグプタ報告」では、従来の経済モデルは資産としての自然の概念が軽視されているため、GDPの成長を目指した指標のみでは生物多様性に悪影響があることを警鐘しています。同様にSDGsにおいても、現在の人類を「誰一人取り残さない」ための目標とターゲットを設定していますが、100年、200年先の子孫に対しての負債について、また目標の実現のためにダメージを受ける部分もあるということも、考えなければならない大きな課題です。例えば、地球温暖化についても、温暖化ガスの課題ばかりが注目されがちですが、排熱等についても重要な課題です。地球温暖化の議論がここまで加熱する前から、大塚は企業努力としてエネルギーの再利用に取り組んでいましたし、生物多様性についての取り組みも考えていました。規制やルールがあるからではなく、従来から企業としてこうしたほうが良いという方向に動く、このような姿勢には注視していきます。
NC関連事業を持つ強み
医療でないと治らないものは薬や医療で治す医療関連事業とともに、健康な人はそれを維持できるよう、自身で調整することをサポートするNC関連事業を有していることは、大塚の大きな強みであると思っています。自らの意思で健康な状態、より良い状態を維持していきたいという人々の日常で、そういう想いに寄り添ってユーザーの信頼を醸成し続ける事業です。
環境はこれから激変していきます。温暖化、高齢化が進み、社会構造の変化により人同士の関係性や自己管理が問われると思います。だからこそ、それぞれの人や家庭、コミュニティをしっかりと捉える必要があり、NC関連事業の持つ意味に対応していくことが求められるでしょう。例えばコロナ禍において「ポカリスエット」はブランドや飲料としてだけではなく、社会のインフラのひとつになったと思っています。
財務効率の向上は重要なミッション
インフレが加速し、資源の供給制約条件、労働市場の需給不一致などコロナ禍後のマクロ経済の状況が変化してきています。これらマクロ経済動向は、日本経済はもちろん企業行動に大きな影響を及ぼします。
現在、大塚グループは関連会社も含め200社より構成されており、それぞれ独立した会社として経営を行っています。また一つの会社の中でさまざまなビジネスを展開している事業会社もあります。
人材育成など長期的視点でビジネスを行うことに適したやり方ではありますが、一方で、財務会計と管理会計を異なる視点で管理していく方法やツールを今後より強化していく必要があることを感じます。これだけマクロ経済が動く環境下では、財務管理や資金効率について、グループ全社で最も有利となるポジションを見つけていかなければなりません。そのためには資金の集約や、為替リスク管理など、財務効率向上のための手法を今後はより組み入れていく必要があるでしょう。
損益計算書を上から順に見ていくと、顧客、仕入先・外注先、取引先・従業員、金融機関、国や自治体という各ステークホルダーに満足してもらった収支の最後に、株主への配当の源泉である当期純利益が出てきます。財務効率の向上は、企業の成長期待とともに、株主・投資家の期待に応えるためにはとても重要なミッションです。ハードルの高い課題になりますが、必ずチャレンジしていくべき課題であると考えています。