まだ満たされない医療ニーズへの挑戦
大塚グループは「世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造する」という企業理念のもと、疾病の診断から治療までを担う「医療関連事業」と日々の健康の維持・増進をサポートする「ニュートラシューティカルズ関連事業」を2つの柱に「世界の人々の健康に貢献する、なくてはならない企業」を目指して事業を展開しています。社会環境が変化し続けていく中でも、独自のソリューションによって社会全体のウェルビーイングに貢献し、新たな価値を追求してきました。医療関連事業においては、「顕在化しているが満たされない医療上のニーズ」をテーマに、精神・神経領域、がん領域、循環器・腎領域に注力しています。治療薬の開発から、診療支援ならびに疾患啓発、社会復帰支援と包括的なヘルスケアサービスの提供を目指しています。
大塚グループの事業戦略

精神・神経領域
考え方
精神保健とは「個人が、それぞれの可能性を実現し、日々の通常のストレスに対処でき、生産的かつ有意義に働くことができ、自身のコミュニティに貢献することができるようなウェルビーイングの状態」とWHO(世界保健機関)により定義されています。つまり、精神疾患の治療やリハビリテーション等も精神保健の目的に含まれます。大塚グループは、精神疾患を有する患者さんに対し、診断から治療、社会復帰支援まで、シームレスなソリューションを提供することによって、患者さんやご家族、介護者のウェルビーイングに貢献してまいります。
大塚グループが提供するソリューション
治療薬
エビリファイ メンテナ/エビリファイ アシムトファイ(一般名:アリピプラゾール|持続性抗精神病薬)

統合失調症ならびに双極性障害における社会課題である服薬アドヒアランスと利便性向上の観点から、持続性注射剤であるエビリファイメンテナが疾患の治療に寄与しています。また、治療選択肢の拡充を目指し、米国では2023年4月に、欧州では2024年3月にアリピプラゾール2カ月持続性注射剤(エビリファイアシムトファイ/エビリファイメンテナ960㎎)を発売しました。
レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール|非定型抗精神病薬)

統合失調症と大うつ病の適応に加え、2024年に日本初となる「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動」(アジテーション)の適応を2023年の米国に続き取得しました。認知症の患者さんの症状改善だけでなく、ご家族や介護者の負担軽減にも貢献していきます。また、20年以上新薬が承認されていないPTSD(心的外傷後ストレス障害)を対象とした開発も進めています。本疾患による影響を受けている多くの方々に新たな治療選択肢を提供できるよう、努力を続けてまいります。
パイプライン(開発中の治療薬)
1970年代から一貫して、本領域のアンメットニーズの解決を目指して研究・開発を続け、現在、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、統合失調症などの疾患に対し新たな創薬に挑戦しています。本領域における研究開発品目の迅速な拡張を目指し、創薬研究に取り組み、未充足な医療ニーズの解決に向けて努めてまいります。
デジタル技術による新たな価値提供
大塚グループは、治療薬だけでなく、様々なデジタルツールの開発・提供も積極的に進め、精神・神経疾患に包括的に取り組んでいます。
大うつ病デジタル治療アプリ「Rejoyn™」
大うつ病患者さんに対する補助療法となる世界初のデジタル治療アプリを米国で開発・提供しています。
大塚製薬>ニュースリリース>デジタル治療アプリ「Rejoyn™」を米国で発売開始
認知症の神経心理検査用プログラム「ミレボ®」

タブレット端末にてアイトラッキング(視線計測)技術を用いて簡便に認知症の検査が実施できる神経心理検査用プログラムを日本で開発・提供しています。認知症領域のSaMD(医療機器としての機能を持つソフトウエア)として日本で初めて保険適用されました。
当事者のリカバリーを支えるVRトレーニングプログラム「FACEDUO」

社会生活場面を教材にVirtual Reality(VR)で練習できる「ソーシャルスキルトレーニング支援プログラム」、当事者のご家族に社会参加を促す際に有効なコミュニケーションのポイントや対応方法を学ぶことを目的とした「ひきこもり家族支援プログラム」、良好な人間関係を築くスキルを育てる「感情認知トレーニングプログラム」、認知症患者さんのご家族や介護者が、患者さんの気持ちや行動の背景を理解し、具体的な対応を学ぶことを目的とした「認知症ケア支援VR」を日本で開発・提供しています。
患者さん・ご家族に向けた情報提供・疾患啓発
こころの健康情報局「すまいるナビゲーター」(日本)

統合失調症、双極性障害、うつ病、子どもの自閉スペクトラム症、認知症の患者さんやご家族、支援する皆さまに対する情報提供を主としたウェブサイトを展開しています。
The Otsuka Patient Education Network (OPEN)(米国)

患者さん、ご家族や介護者の方々が、腎疾患、精神疾患、アルツハイマー型認知症を主とした疾患についてより理解を深めるための教育資材を提供しています。
がん領域
考え方
がんは日本人の2人に1人が一生のうちに罹患するといわれ、高齢化に伴い今後も増加することが見込まれます。大塚グループでは、がん患者さんが尊厳を保ちながら「自分らしく生きる」ために、多面的にサポートしていくことが重要であると考えています。がんに対する診断技術の向上や治療薬の選択肢は年々広がっており、大塚グループもあらゆるステークホルダーとともに抗がん剤の開発に取り組んでいます。がん患者さんのペイシェントジャーニーを治療ステージ毎で考え、それぞれのステージに必要とされる支援を提供することでペイシェントジャーニー全体を支えることを目指しています。今後も革新的な治療薬を一刻も早く患者さんに提供できるよう、外部と連携しながら新たな技術の導入や研究開発に努めてまいります。
大塚グループが提供するソリューション
治療薬
ロンサーフ(一般名:トリフルリジン・チピラシル|抗悪性腫瘍剤)

切除不能進行・再発大腸がん、切除不能進行・再発胃がんの治療薬として国内外で承認を取得しています。2023年には大腸がんにおけるベバシズマブ併用療法が海外でも適応追加されるなど、より多くの患者さんの治療に貢献しています。
診断薬
ヘムサイト®(造血器腫瘍遺伝子パネル検査)
医療機関やアカデミア(大学・研究機関)との共同研究コンソーシアムにて、造血器主要及び類縁疾患を対象とした日本初の遺伝子パネル検査を開発・製造販売承認を取得しました。本検査によって遺伝子異常による「診断」、「治療法選択」、「予後予測」が可能になり、患者さんの個別化医療へ貢献できることが期待されています。
大塚製薬>ニュースリリース>国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト®」新発売
パイプライン(開発中の治療薬)
経口抗がん剤のパイオニアである大鵬薬品は、50年以上にわたる抗がん剤の研究・開発の知見やノウハウを基にした自社創薬に加え、国内外の研究機関やバイオベンチャー企業、アカデミアと連携し、革新的な新薬の迅速な開発に取り組んでいます。現在、非小細胞肺がん、上部消化器がんなどの抗がん剤の開発を進めています。
また、大塚製薬では、外部との共同を軸に遺伝子改変T細胞療法など、新規治療法の確立に挑戦しています。
治療と仕事の両立支援
アリルジュLEARNING、アリルジュSUPPORT

アリルジュは、がんになっても働き続けられると人々が思う社会をつくることを一つの事業目標として、がんに関する社会課題の解決に取り組んでいます。がん患者さんが職場(上司、同僚)に求める治療と仕事の両立に対する正しい理解、病気に対する正しい知識をサポートするために、治療と仕事の両立に対する教育用ポータルサイト「アリルジュLEARNING」を提供しています。また、医療機関と企業間の復帰や両立支援に関する情報連携や連携支援体制が不足しているという日本の課題を解決するために、医療機関と企業を繋ぐ国内初のSaaS(クラウドサービス)である「アリルジュSUPPORT」の提供を開始し、新たな社会づくりに挑戦しています。治療と仕事の両立支援のほかに、がんから命を守るための企業向けがん検診勧奨サービス「アリルジュCALL」の開発、がんのリスク因子のひとつである喫煙を減らすための企業向け卒煙施策支援サービス「アリルジュNON-SMOKING」を提供しています。
循環器・腎領域
考え方
循環器・腎疾患は高齢化や生活習慣の変化に伴い患者数が増加し、世界的な健康課題となっています。進行性の疾患が多いことから、早期診断・適切な治療の介入が重要ですが、症状が進行するまで気づきにくく、予後に影響を及ぼすリスクが高い領域といわれています。また、高血圧や糖尿病といった併存疾患の治療・管理も重要です。大塚グループでは、循環器・腎領域におけるアンメットニーズの解決が重要と考え、本領域に強みを持つ企業の買収や提携などによって、革新的な治療薬や、医薬品と医療機器のノウハウを組み合わせた新たなデバイスの開発に努めてまいります。
大塚グループが提供するソリューション
治療薬
サムスカ/ジンアーク(一般名:トルバプタン|V₂-受容体拮抗剤)
心不全・肝硬変における体液貯留、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症、腎臓の遺伝性疾患である常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)に適応を有し、世界40の国・地域で承認を取得しています。
高血圧のデバイス治療(国内では開発中の治療法)
uRDN(超音波腎デナベーションシステム)
生活習慣改善や薬物療法では十分な血圧コントロールが難しい高血圧患者さんの併用治療選択肢となるデバイス治療として、2023年11月に米国で初めて承認されました。米国では保険適用が徐々に広がり患者さんのアクセスが少しずつ拡大しています。日本では臨床試験が進行中です。
パイプライン(開発中の治療薬)
自社創薬の強化に加え、腎領域にパイプラインを有する企業と提携し、腎不全の原因疾患に対する創薬を進めています。なかでも、有効な薬剤がない進行性の自己免疫性慢性腎臓病であるIgA腎症は、約半数が20年以内に透析治療となり、アンメットニーズの高い疾患です。現在、本疾患のファースト・イン・クラス(そのカテゴリーの医薬品の中で、最初に認可された新薬)のバイオ医薬品になることが期待されているシベプレンリマブの開発に向けて挑戦中です。
より多くの患者さんへ医薬品をお届けする取り組み
(Access to Medicine)
医薬品アクセスの向上
大塚グループでは、医薬品アクセスの向上に貢献すべく、新たな治療薬や輸液の研究開発に取り組むだけでなく、経済的な問題やその他の理由によって医薬品へのアクセスが制限される方々へのサポートも行っています。例えば大塚製薬では、Otsuka Global Patient Access Support Policyを制定し、患者さんの治療アクセスの改善を進めています。具体的には、アジアの国・地域において白血病治療薬「アイクルシグ」を用いたOtsuka Patient Assistance Programを実施しており、保険償還が不十分な場合あるいは経済的な理由で治療費を支払えない患者さんに対して、薬剤提供等による経済的支援を実施しています。
結核治療薬デラマニドのアクセス拡大の取り組み
結核は、エイズ、マラリアと並ぶ世界三大感染症の一つです。2023年には世界全体で推定1,080万人が罹患し125万人が亡くなられ、感染症による死因としてはトップを占めています(2023年WHO推定)。大塚製薬では、結核の撲滅に向け、より多くの患者さんに対して自社創薬の多剤耐性結核治療薬デラマニドへのアクセスを拡大する取り組みを進めています。多くの患者さんがいるアフリカやアジアなど途上国での持続可能な調達を目的とした組織(ストップ結核パートナーシップの「世界抗結核薬基金(GDF)」)と連携することで、この治療薬を必要とするほぼすべての国で薬剤へのアクセスを可能としています。2014年から累計12万症例分を超える薬剤を多剤耐性結核の制圧に取り組む国々へ届けています。また、デラマニドに続く結核治療薬を現在開発中です。
大塚ホールディングス>Access to Treatment 古くて新しい病気「結核」に立ち向かう
輸液の適正価格での安定供給
大塚グループでは、医薬品の展開において適正価格での提供等、医療を取り巻く環境整備にも配慮した取り組みを行っています。
例えば、輸液は医療上の必要性が高く、市場へ継続的に安定供給する必要があります。そのため大塚製薬工場では、輸液を現地製造し、安定供給はもとより、各国での適正価格での提供や雇用創出など、地域社会への貢献にもつなげています。
治験薬のアクセス拡大の取り組み(Expand Access Program)
既存の治療法では十分な有効性を望めず、さらに病気の状態によって治験(臨床試験)を受けられない患者さんに対して、大塚グループでは、Expanded Access Programを通じて、医師からの申請に基づき定められた条件を満たす場合、治験参加基準から外れた患者さんに対しても治験薬の提供を可能にし、治験薬へのアクセス拡大に繋げています。

また、米国において治療を開始するにあたり、保険の確認、治療費の援助、個別化された看護支援などのサービスを、患者さん、介護者、医療関係者の方々に提供しています。
患者サポートプログラム
一部の国や地域において、患者さんが大塚グループの特定の製品を購入する際に、患者さんや介護者の方々が支援を受けられる様々なプログラムを提供しています。
大塚製薬
(米国)The Otsuka Patient Assistance Foundation, Inc. (OPAF)
無保険もしくは保険では治療費が十分にカバーされない患者さんを対象に無償で大塚の治療薬を提供する非営利団体です。

(米国)大塚アメリカファーマシューティカル(OAPI)

Otsuka Patient Support™では、患者さん、介護者、医療従事者のためのリソースやツールとサポートチームを組み合わせて、患者さんを支援しています。
大鵬薬品
(カナダ)大鵬ファーマカナダ

医療費償還に関する案内、専任看護師による1対1のサポート、専門的な薬局サービスや宅配サービス、また治療を開始する際に提供される患者さん、介護者、医療関係者への教育サービスを含む、個別化された患者さん支援プログラム(Conexus Patient Support Program™)を展開しています。